アメリカ文学から紐解く、「差別」「否定」が一家代々に渡る悪い連鎖を生み出す程の心の奥底に潜む「劣等感」【1397】

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

以前の【366】のブログ記事では、「アメリカ文学入門:諏訪部浩一 責任編集」を一読、その中からすぐに読みたい1冊が決まっていました。

そして、その後読み始めた、たまたま長編であり難解であると知った「アブサロム、アブサロム!:ウィリアム・フォークナー 著」をこの度拝読。

以前も綴りましたように、アメリカ文学はその結末が必ずしもハッピーエンドではない、むしろ悲劇的であるということの象徴的なストーリーでした。

そのキーワードの1つに、「ironic:アイロニック:皮肉」があるのだと。

このたびの長編は、(確かに噂通り)複雑で分かりにくかったのですが、覚悟を決めた上で読み進め、親切な最初に人物紹介の掲載も随分役立ちました。

時折、「えーとこの人はどんな立場の人だっけ?」などとページを戻りながら読んでいきました。

不思議なもので、数行は到底途切れることが無い文章の読みにくさがあるにもかかわらず、息つく暇も無いほど物語へ吸い込まれるように、そしてむさぼるように読んでいくことになりました。

気が付けばページが進んでいるというまるで魔法のような「しかけ」を感じます。

このたびは、読み終わって、自身が思う人種間の「差別」「否定」の根源はどこにあるのか。。

ひょっとして、このストーリーがそれを暴き出し、教えてくれているのではないかと思いました。

正確な答えは著者様以外分かるものではありません。

とはいえ、こうした文学作品も1つの問題提起ととらえると自分なりの感じ方を持っても良いと思うのです。

1つその答えを見つけたような気がします。

このたびは、その心の根深い部分に隠されたある「モノ」を自身が暴き出してみたいと思います。

一家の悲劇の始まりのキーパーソン、「トマス・サトペン」の幼少時代のトラウマ

この記載の前に、「ウィキペディア」を拝読。

この物語についての一定の正しい要約が掲載されていました。

サクッと物語を一読だけでは到底分かることはないこの登場人物多数の難解な物語です。

とはいえ、最初から最後までで何度も出てきたエピソードが非常にキーポイントに値する部分だと誰もが分かると思います。

「サトペン100マイル領地」と呼ばれる豪邸を作った初代の持ち主、「トマス・サトペン」は、幼少の頃、後にトラウマとなるような差別を受けました。

お遣いで訪問したお宅の黒人に、表玄関から通してもらえなかったのです。

「裏へまわれ」という黒人による指示。

これが後の根深い「差別」の連鎖を生んでいきます。

私達の浅いイメージを覆すのが、「サトペン」が白人であったということ。

白人が黒人によってこうした差別的屈辱行為を受けたエピソードです。

私たちがイメージにあるのは、黒人が白人によって差別を受けるというものでしょう。

実はそうではなく、どんな民族も民族同士の間でこういったことがあったということなのです。

アメリカ社会の奥ではかなり複雑な人間模様が入り組み、一筋縄というものでは決してない点がとても重要です。

幼少時代に粘着してしまったトラウマが「サトペン」のその後の一生に付きまといます。

「差別」をされた自身が行ったことは、同じく人を「差別」するという連鎖の悲劇でした。

そして、最初の妻に黒人の血が入っていることを後で知ったことで、「否定」が民事訴訟や離縁という形で表れます。

そうして、「考え方」が一家代々に渡り遺伝のように引き継がれ、心の奥底に浸み込んで悲劇を生む結果になってゆきます。

思えば、幼少の頃に受けたトラウマの時の近所の黒人も「差別」や「偏見」を持った考え方が完全に心に根付いていた上で、まるで呼吸するように自然に発してしまった言葉だったと思われます。

たった一度「差別」に出くわしただけのわずかな瞬間でさえも、その後の根深い悲劇を生み出す恐ろしさ、どんどん新しく他の人にも長年に渡り悪いしきたりが伝播していく様子を決して単純ではなく入り組んだ複雑さを孕む象徴のように、長く難解な文章でまざまざと綴っているのです。

あとがき

「差別」と「自負」は対極にあるものだと思います。

なぜ、「差別」があるのかというところは、自身の考えでは、「劣等感」の表れではないかと思います。

本当は平等を求めているからこそ、「劣等感」という感情が湧いてきて、「そんなのおかしいよ」と伝えているのです。

それなのに、その後の方向を見間違い、されたことと同じことを別の人間に対してやってしまう。。

これが負の連鎖ともいうべき、「差別」の広がりの正にその分岐点だと思います。

「劣等感」を抱かないためには、自分への自信、つまり「自負」が重要で、この物語の一家全体で連鎖した悲劇から思うことは、代々その大切さを伝えていく一家全員での「体勢」であるとそのような感想を持ちました。

それくらい大勢で一度に協力的にやらなければ、解決できないことだと。

「差別」や「偏見」を悪いことだという前に、自分自身の「劣等感」をまず失くすという順番が大切。

なぜ「差別」してしまうのか、なぜ「偏見」を持ってしまうのかの人に対する悪しき行為は、「自身の無さ」「自分の無さ」の自分への「評価の低さ」にあるとも言えないでしょうか。

科学英単語というものにとことん触れることができる本を読んだ後の変化【1162】

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

このたび、1冊の本を読み終わりまして、ご紹介したいと思います。

「日経サイエンスで鍛える科学英語 SDGs編 :日経サイエンス編集部 編」です。

このようないかにも難解そうな本ですが、英語と日本文と半分ずつの内容というのがユニークでした。

というのも、「日経サイエンス」という自然科学分野の論文が掲載された雑誌からのピックアップ本です。

もちろんそこに出てくる言葉1つ1つが専門用語であったりします。

それが英文で書かれている本なのです。

本の内部構造

5つくらいの章でできています。

どれも身近なものです。SDGs編ですので、環境問題などが中心と思いきや、もっと広い範囲です。

ジェンダーの問題とか、民族の問題に非常に驚きがありました。

まだ新しい2022年発行の本なので、是非一度お勧めしたいと思います。

ただ、タイトルの通り、鍛える目的もあり、英文の横には一部の専門用語の単語の意味が注釈として掲載のみ。

論文である英文すべてがいったん終わった後で日本文の訳を掲載という構造で、まずは英文だけで読まざるを得ない鍛え方!?のようなものでした。

科学英語というのは、聞いたことがあるような短い英単語に更に加えて何かくっついた長い単語が多いです。

なじみがないので驚きますが、文章の中に何度も登場する単語は、自然とキーワードなんだと思わせてくれます。

そして、いったん流れてなんとなく消えてしまったかのような単語が再び現れ、戻ってその意味を見直したりしてそんな感じで何となく覚えていけるではありませんか。

そんな驚きがあったユニークな本でした。

一番感動した点

一番最後の章に特に感動した部分がありました。

地球は人間まで進化して文明が発達できたその生い立ちが、奇跡の積み重なりであったことで実現できたようです。

他にも人間のような生命体が住む星があるのではないか。。。

などとも言われますが、実は可能性がそれほど高くはなく、それほどよくあることではない、本当に希な偶然が多発したことでできた地球に私たちは有難く住めていると知りました。

まずは地球の存在自体に感謝せねばならないのかもしれません。

毎日こうして生きることができるというのは、気が遠くなるような遥か昔の思わぬ偶然や奇跡が起こったことのおかげだということなのです。

あとがき

実は、この本に似た構造の読みものを週に一度新聞で読んでいた私です。

同じ系列の「日本経済新聞:夕刊」の水曜日。

1ページの1/3程度の分量の短めなトピックの記事ですが、毎週趣味的に読んでいたのです。

「Step Up English」というコーナーです。

まずは、英文を注釈のある単語の意味を目にしておきながら、音読。

ちなみに、私TOEICは600点程度です。たいしたことはありません(^_^;)。

そして、その後、日本文の訳を読んでいきます。

今回の本と同じ構造です。

ただ、登場の単語は、この本程の専門用語ではないものでした。

それでも、簡単には読めないと思っていながらの、今回のこの本を一応最初から最後まで読んでのその後です。

その後いつものように新聞でそのトピック記事を読む時に少し易しく感じたという体験をしました。

ある意味この本で鍛えられたのかもしれません(^_^;)。

今回は、SDGs編ですので、他にも分野の違うものがシリーズ内にあるみたいです。

少し英語に触れている方であれば、まずは読む気にはなると思いますので、その入り口はOKだと思います(^-^)。