「悪い心地の解消」こそ目指すゴール、ボタンがぽろぽろと外れてしまうニットの伸びたボタンホールを塞ぐミシンステッチ【306】

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まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

好きなブランド古着に特化しながら、すべてが古着で成り立つワードローブ、このようなスタイルも10年越えとなりました。

新品のお買い得なお洋服と古着の良質な作りの価値を比較し、後者に軍配という判断のもと。

ただ、古着市場にあるということは、人の手から一度手放された時点で必ずどこかにデメリットがあるものです。

お得感と引き換えに待っているのはリフォーム、この作業の中でお直しをする技術のみならず、リフォーム後の心地を体感しています。

このたびは、ニットのカットソーのボタンホールが伸び、ぽろぽろと触れるだけで外れるストレスの解消に重点を置きながら成果を出していった記録となります。

見た目ではそれほど気付きにくいものですが、着る者自身の「心地」たるもの非常に悪かったのです。

前ボタンのカーディーに有効、ボタンホールの伸びをミシンステッチを加えた単純作業で外れを解決し同時に「嫌な心地」も解消した

エンポリオアルマーニのVネックカットソー:くるみボタンが馴染みゴールドカラーに畝が入るニット素材。

一目見て素敵だと思ったのですが、実際に入手後に気付いたのは、ボタンが片っ端から外れていくボタンホールの伸びでした。

ボタンがぽろぽろと外れる様子:写真で動きが伝えにくいのですが、左上→右下の順でご覧くださいませ。

ぽろぽろ具合伝わりましたでしょうか。

このような外れが、着る者のストレスを生んでいました、おそらく前の持ち主様の「手放し」はこの事象に対する「諦め」だったと想定します。

ボタンホールの両サイドを狭くする作業:ミシンは縦に動きますが、1針目ずつ手で左右に移動する手動を追加。
糸始末:縫い始めと縫い終わりの糸は、裏面へ針で送り裏面で結び、玉止めはこうして隠れます。
ボタンホールを狭める作業の図解:左右の縁を刺繍したようなイメージです。

やり過ぎないように、まずはあっさりとやってみてそれで効果が出ていれば最低限で良いと思います。

リフォーム後の着用:胸を張ってももうボタンは固定され外れることはありませんでした。成功です(^-^)。

あとがき

他愛もない作業ではあったかと思いますが、実に効果的でした。

人の目には、「破れている」「ほつれている」などと映らない事象でしたが、着る者本人の心地は非常に悪かったところへ劇的変化を得たと思います。

確かにお洋服は見せるもの、しかし着る者が気持ちよく着ることが本当は一番大切なのではないかと思います。

かっこよく見せるために我慢が伴うなどと時に言われている装い、しかしその瞬間の本人の表情が心から清々しい気持ちの表情だと言えるのでしょうか。

今一度、本来装いもまずは本人のためのものであるということを見返すことも大切です(^-^)。

ピクチャレスク-山田絵美-ブログラスト
書き手:ピクチャレスク

ノーカラージャケットコーデの抜け感を感じながら気付く、ジャケットのラペルの存在が作り上げるエレガンス【221】

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まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

「抜け感」というテイストを理論的に説明できるものでしょうか。

「力が抜けた感じ」「ルーズな感じ」「カジュアル寄り」から「クール」「かっこよさ」という印象へ向かうようなもの。

そんなテイストを作っているのは具体的にはどんな部分なのか。。随分ぼんやりした「抜け感」を理論をもってこのたびお伝えしてまいります。

独自に「抜け感」を演出したコーデを3セット作ってみました。

どれも共通する点があり、「ノーカラー」であることです。

このようなちょっとしたパートも「抜け感」を作りあげてくれる重要な要素の1つとなるのではないかと考えています。

クラシックな「ラペル」を伴う衿のデザインと「ノーカラー」でまっさらな衿のデザインの比較を、どうぞお楽しみいただければと思います。

軍服の名残のラペルは長い服飾の記憶に刷り込まれたクラシックを感じる部分、ノーカラージャケットの抜け感が教えてくれた

ラペルとノーカラーの比較:左-「DKNY JEANS」様、黒の牛革。右-「Louisa Via Moda」様、黒のループツイード。

ぱっと見て、襟元にまず視線がいくという現実的な傾向も重要です。

素材がレザーとツイードということで比較しにくいものの、明らかに右の方が親しみやすさを感じます。

この印象は「抜け感」の1つ「かしこまらない」という感覚。

左のラペル付きは素材が違えばよりきちんとした印象ですが、ロックテイストにも通じるレザーであることで、程良きバランスを感じて入手したのがきっかけでした。

では、ここからはすべて「ノーカラー」の3点のジャケットコーデを上下の組み合わせでご紹介します↓。

切替襟無しジャケット:「エンポリオアルマーニ」様のお品。レーヨン/67%、毛/33%。黒で70cm級のロング丈。

切り替え線の視覚的効果が大きいシンプルながら洗練されたような印象があります。

衿無しコーデ①:インナーには「DKNY JEANS」様のTシャツ。ボトムは「501」の黒がライトグレーに落ちたもの。
変形衿無しジャケット:「エンポリオアルマーニ」様。ベージュx黒の水玉のベルベット素材。

衿の端の形が一癖あってユニーク、このクセをすっきりとしたノーカラーが親しみやすい方向へバランスをとってくれているかのよう。

衿無しコーデ②:ノンウォッシュに近い「501」、インナーにも真っ黒Tシャツ「エンポリオアルマーニ」を配置。

黒の水玉コーデには、黒以外を入れないという最も王道の考え方で。

全くの衿無しジャケット:「SLED」ブランドは「(株)東京ニュースター」様の黒の本革レザー。綺麗なライン。
衿無しコーデ③:ワンピースはブランド不明(手作りかもしれません)の古着。ボレロのように軽く羽織る着方。

あとがき

こうして、ノーカラージャケットの気負わない「抜け感」を味わったことで、クラシカルなラペル付きの「テーラージャケット」のきちんとした印象を作る要素の1つに、「ラペル」の存在があることを再認識。

必ずしも「付いている」ということがアドバンテージ・メリットとは限りません。

このことは、古着のアレンジの可能性の1つとしても言えることであり、多くのジャケットの中で大半を占める「襟付き」に対し、ニッチな存在の「衿無し」への変更は劇的な変化です。

そして、大半を占めてきた襟付きの中でも特に、「テーラー襟」こそ、最もクラシックさを極めた姿なのだという点です。

きちんとした場所では襟1つがその場に挑む「姿勢」をも印象付けることがあり、衿のデザインへの注目は大切なことです。

襟にとどまらず、裾の仕上げの仕方など数々のパートごとにこうした発見がある可能性を感じました(^-^)。

山田絵美
書き手:ピクチャレスク