まえがき
こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。
今回は、布製ハンドメイドバッグを作るにあたって、材料手配の場面のお話です。
出来上がりに大きく影響すると思われる、裏地のチョイスについてです。
以前、生地屋さんで列を作って並んでいた時の事。
たまにあることのですが、私が持っている生地が反(たん)の最終であり、これっきりという生地でした。
生地在庫の最終を購入ということで、商品のラスト1点と同じような感じです。
その時に、後ろに並んでいらっしゃった女性に声をかけられました。
「それは何に使うの?」と。「バッグの裏地」と答えたところ、「裏地にはもったいない、裏地なんてもっと安物の生地でよい」とのこと。
おそらく、その生地がほしかったのに最後なくなってしまったので名残惜しかったという心理もあったかもしれません。
あとあと、その女性の言葉は大変いろいろな意味で考え深いものがありました。
裏地に対して、裏側に潜むアイテムだから、どうせ目立たないのだから良質な華やかな生地を選んでも意味がないという価値観のように感じられました。
私の場合価値観が真逆でした。
裏地こそ隠れている部分にひっそりおしゃれをすることで、高付加価値を出したいという気持ちを持っています。
そんなエピソードが、ますます表地以外のパーツにも注視するようになったきっかけになったのです。
けれど、その女性の意見もその後取り入れた部分もあります。その生地は結果、表地に使ったのでした(^_^;)。
表地と裏地が同じで、後々ショルダーバッグにもできるカンの付いたポーチを作り、見事ヤフオクでご購入いただきました。
何かしら、人の意見というものはたとえ価値観の違う人でも良い部分があります。
他の人も良いと思った生地は、また、さらなる他の人も良いと思う可能性の高さを感じました。
大変興味深いエピソードでした。
カジュアルとエレガントの違いの感じ方
さて、今回の裏地のチョイスにあたって、まず、表地を見比べてみます。
カジュアル感ある生地とエレガントな生地です。
しっかり理解していただくために、あえて、いかにも誰が見てもくだけているカジュアル感のある生地では意味がないので、少し難しいレベルでチョイスしてみました。
左の色は濃グレー。ツイードではトップクラスのメーカー、「リントン」社様のファンシーツイードなので、リントンツイードという呼び方をしています。
右も同じファンシーツイードですが、こちらはドイツ製。
申し訳ないことに、左のリントンの方の混率が分かっていません。
混率が不明なのは少し残念なのですが、リントンの生地をいろいろ見させていただいて、主に、綿や毛の天然素材が多いのではないかということを予想しました。
その他は、レーヨンやナイロンなどが少しずつミックスされています。
ということで、私の独自判断ですが、この濃グレーは毛がおそらく50%以上入った秋冬的な混率のリントンツイードだとみています。
右側の白地は、ドイツ製で、こちらはリントンのように有名ではないですが、メーカー様のタグが生地屋さんの反には付いていました。
ひかえてこなかったので、メーカー名は分からないですが、こちらもリントンツイードと良い勝負をしています。
私が思うに、かなりレベルは高いツイードだと思います、高価でしたし。。
そして、カラフルにいろいろな色の糸を織り交ぜています。
さて、この2点を比べて、どちらがカジュアル、どちらがエレガントか、というのは言うまでもなく分かりますね。
左のリントンはカジュアルテイスト。右のドイツ製はエレガントテイスト。
まずは、これを感じ取るというところが裏地チョイスへの第一歩と考えます。
特にカジュアル、エレガントの違いで見なければならないとは思いませんが、結局洋服にしても、素材にしても一番比較しやすいのが、カジュアルなのか、エレガントなのかということだと思っています。
もう少し、リントンがカジュアルであると感じるその理由、右の白地がエレガントであると感じるその理由を言葉で表してみましょうか。
リントンのグレーは、何かざっくりした感じがあります。糸の混率が上述のように、毛とか綿が大部分で、天然素材を多く使うというところが、カジュアル感ある素材の糸なのだと思います。
天然素材で作られたお洋服の綿/100%Tシャツなどがカジュアルであることが分かりやすい例です。
チェックのネルシャツなども同様です。
そうすると、洋服でいう天然素材が大部分でできている物体はカジュアルに出来上がるものです。
ツヤのあるようなレーヨン、ナイロン、ポリエステルは使われているとしても少量でしょう。
そんな感じでこのリントンもカジュアルな素材なんだなあというとらえ方を私はしました。
一方、白地のファンシーツイードを見てみます。
ということで、同じファンシーツイードなのに、左右でここまで対極的な違いの素材なんだということです。
ただ、ここで加えておきたいのが、この2点を比べるとリントンツイードはカジュアルでしたが、比べる相手が違うとまた違ってきますので、この2点を比べたというのが、私の取り扱い生地の中でのお話ということです。
それは、どういうことかというと、別のエレガントな生地と今回のこの白地の方のファンシーツイードを比べたときに、こちらがカジュアルに映ることも比べる相手によってはあるということ。
そもそもツイード自体が大きくは、カジュアルテイストなんだと思います。
あのエレガントなシャネルブランドの洋服にも初代デザイナーの「ココ・シャネル」様の時代からリントンツイードを取り入れていたとのことです。
シャネルブランドだからエレガントに見えているというまたこの魔法のようなしかけがあるのかもしれません。
カジュアルという言葉以外の表現として、メンズっぽいということ当てはまるかもしれません。
シャネルは、男性の洋服のアイテムや軍服アイテムから女性用に初めて取り入れた素材が多くあるようです。
ツイードというものも、もともと男性のジャケットという男物の代名詞的な存在であったアイテムを女性用に取り込んだという点が斬新であるという点で評価されてきたと言われています。
ツイードそのものがもともと男性特有の洋服の素材だったのですね。
ですから、今回ご紹介の2点の表地は、作るバッグの形がおのずと相性の良いデザイン、向くデザインというのも絞り込めるような分かりやすい違いであるとも言えます。
リントンツイードは四角っぽいバッグ、ドイツ製の方はカーブのあるデザインもきっと似合うでしょう。
裏地選びの秘訣
さて、いよいよ裏地をチョイスしていきます。
先程上述で感じたテイストの違いを大切にしながら、マッチした裏地を選んでいきます。
このマッチという部分も価値観の違いがあるので、あえて、違うテイストの。。と思う場合は当てはまらないですが、私の方針では、マッチする同じテイストでそろえてすっきりとシンプルに見せたいという思いがあるので前者で行きます。
まずは、リントンツイードの濃グレーの方から。
リントンツイードのツヤのなさにマッチするべく、ツヤのない裏地をあえて選びます。
裏地というものは、どれもツヤがあるものが多いです。そのような固定概念を超えて、表地用の中からもどんどん探していくのです。
そして、見つかったのが、この「ポプリン」という織り目の生地。
全くツヤが無いとは言いませんが、他になかなか見つからず、しかも色の展開が豊富にある素材がこのポプリンでした。
表地が濃グレーで暗めなので、中側を開けた感じにするべくパステルカラーを選択。
ブルーとピンクのコンビでツートンカラーに遊び心を混ぜた裏地にするイメージで2カラーのチョイスです。
なぜ、ピンクとブルーなの?という疑問を持たれたでしょう。
それは、表地の濃グレーをよく見ると、間にわずかに、このパステル系のブルーやピンクの糸が見られます。
それをおおげさにとらえて、拡大したかのように分かりやすく裏地の色に選んでみたわけです。
では、次に、右側のドイツ製のファンシーツイードの裏地行ってみます。
リントン生地とは反対で、ツヤが大いにある素材ですので、裏地もツヤのあるエレガントな感じの裏地にします。
そして、やや厚手のツイードにナイロン/40%も入った作りあがったときに厚みがある素材をチョイス。
この裏地は過去に何度も扱ってきました。
色は10種ほどの展開があり、たいてい、どんな色味の生地にも10種から当てはめることができます。
この生地、とても優れているのが、厚手であること。ナイロンというのはごわっとして厚みを出す出来栄えになるようで、重ねて縫ったりするとボンと膨らみが増します。
なのでか細いものより、厚みの増すこのラメツインクルサテンはツイードに使ったらよく合うと考えています。
もともとは、衣装、ドレスなどに仕立て上げてふんわり厚みも出した立体感あるスカートなどを作る目的の生地のようです。
あとがき
ということで、今回、裏地選びの秘訣を、同じファンシーツイードでお伝えしました。
あくまで私の価値観でのお話ですので、共感してくだされば似た考え方なのでしょうし、違うとらえ方ももちろんあると思います。
ただ、私の目指すべきゴールが「粋:いき」にあります。
垢抜けたすっきり感などを重視することになりますので、表地に合う裏地ということで「なじむ」とか「歩調が合う」ということを重視します。
違和感あることが面白い、という考え方もあるでしょうね。でもそれは何かすっきりしなくてモヤモヤしてしまうので分かりやすい感じ方ができる組み合わせ方であるということです。