片玉縁風ポケットの入り口の比翼は硬めの方が使い易く安定して美しい、伸び止めテープ(平)を貼ることで高める細部パーツのハリコシ【1252】

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

温泉や海に持っていくようなお水対策のされた撥水加工の生地3種寄せ集めのバッグを現在製作中です。

前半のダイヤキルトがけや支柱の取り付けが終了し、現在は後半部分へ突入、裏地のポケットを作っています。

フラップポケットは片玉縁風ポケットとフラップのコンビネーションで行き着いた現在のデザインです。

こちらの細部を徹底する決め事がこのたび生まれました。

それは、比翼部分の立派な作りを徹底する伸び止めテープの利用です。

片玉縁風ポケットの比翼が貧弱に出来上がってしまった理由を探した、そこには伸び止めテープが必要でハリコシがあるべきだとひも解いた

ナイロンオックスはややごわついた素材です。

よって、比翼部分も接着芯のみで大丈夫だと思ってしまいました。

しかし、その判断が間違っていたようなのです。

比翼部分に伸び止めテープを貼っていない状態:ぱっと見はその形を成していますが、口が開きがちでした。
近寄って見てみる:これでも三つ折りしてあるのですから明らかに華奢でハリコシが不足していると言えます。
更に近寄る:比翼の厚みを見ると全体とのバランスが悪いです。ここは重要、シャッターのような役割です。
そこで、一度解体してやり直しをしました。その時に伸び止めテープ(平)9mmを少し重ねて並べて貼りました。

伸び止めテープ間の隙間があると表に響くので、気持ち重ねて貼っています。

そうして、同じ作業をやり直してポケットを完成させました。

光の加減申し訳ないです<m(__)m>。確かな重厚感が生まれ、この姿こそ本来のバランスの良い姿だと思います。
持ち上げているにもかかわらず口もちゃんと閉まりました。わずかなミリ単位の重なりも意識して隙間を解消。

この直しからの学びは、「生地頼み」の固定観念を失くすこと。

ごわついたナイロンオックスなのだから必要ないと思っていた伸び止めテープの省略は、結局は周りの丈夫な同じ素材とのバランスが悪くなっていたのです。

薄手の生地でも厚手でも関係なく、この比翼部分には伸び止めテープを貼ることが「仕様」の1つとしてあるべき作業なのだと教えてもらいました。

こうして伸び止めテープ使用前と後では比翼のボリュームと隙間の解消が実現しました。

あとがき

隠しポケットは、2018年から取り入れてきまして、最初はファスナータイプでした。

そして、2019年頃から比翼タイプに、2023年でフラップとの混合に行き着きました。

ファスナーは確かにセキュリティー性もあるのですが、開け閉めのストレスもあり、バランスの良いセキュリティー性を追求した結果が現在の「比翼+フラップ」という片手で出し入れ可能なタイプです。

こうして、比翼式を取り入れてから随分経過していますが、今頃になってまだ新しく気づくこともあったわけです。

そうすると、常に研究や改善は欠かせないものであるということになります。

書き手:ピクチャレスク

極寒の冬には前身を完全に閉じるのがあったかい、ヴィンテージ物のボタン無しボレロ風前開きカーディガンからセーターへの縫い留めリフォーム【827】

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

古着は完全ではない何らかの事情があるものも多く、だからこそ残っているのだと納得することがあります。

ここをもう少し。。など、現状のままでは十分ではない点があるからこそ、リフォームの出番です。

少しのことながら、手を加えることで満足する「心地」が生まれればということを願いながら、このたび実際に行いましたリフォーム例をご紹介したいと思います。

前身が開きっぱなしのボレロ風カーディーガンを寒い季節の最中(さなか)に着用できるよう、セーターに変えていくリフォームを図解でお伝えしたいと思います。

現物はブランド様への「著作権」への考慮で写真の掲載をやめさせていただきましたので図解のみです<m(__)m>。

ボタン付きのカーディガンでも応用可能、前開きを縫い閉じるリフォームで着用時の暖かさを実現したい

このたびのカーディガンは少し特殊なデザインでした。

本当に羽織るだけのボレロ風なカーディガン。

ボタンホール1つ付いていないという特殊なものだったのでした。

それでも素材が毛混のあったかいもので紅色。

この温かさは、「羽織るだけ」の季節には暖か過ぎるバランスの悪さもあったのです。

そうして、「羽織る」出番よりも「着込む」という出番の方がこの素材の場合は現実的には多いと考え、リフォームを決意したのでした。

before:デフォルトはこんな感じでボレロのようなVネックの深い、羽織るタイプのカーディガン。丈は50cm。

ボレロと言っても、丈は50cmあるので、そこにポテンシャルを感じました。

そして、前身を重ねて縫い閉じをするアイデアを思いつきます↓。

このように重ねて、ステッチで固定。セーターの色に合わせて馴染み溶け込むような糸の色を選びました。

上になる方の見頃の端の裏側に伸び止めテープ9mmの「平」を貼りました。そのテープに縫い付けがかかるようにステッチしていきました。

一番上の横ステッチは固定目的、合計3本のステッチを入れたのでした。

応用としては、グログランテープのようなリボンテープを用意して、その裏に伸び止めテープを貼ってグログランテープが表に少し顔を出してしまっても良いデザインにしてしまうと気軽にできるかもしれません。

伸び止めテープは1枚仕立てでやりましたが、わずかにうねりが残っています。

何なら2枚重ねでやるべきだったとも言えます。

何も貼らないと確実にうねりが出るかと思います。

過去に伸び止めテープをうねり解消目的で3枚重ねでやっと効果が出た事例もありました。

ニットを侮ってはいけません、せっかくの目立つラインなので伸び止めテープの利用価値は大いにあると思います。

after:完成です。正面から見たときにステッチの線がわずかにボックス状に映る感じが実際です。

ステッチする位置も、ニットの編み目の太い線に隠れるような位置を選んだりすることで浮くものにならない工夫もできると思います。

ということで、ちょっとした作業ではありましたが、着心地は非常に良くなりました。

元の羽織るだけのアイテムだとダランとしてしまって使い勝手が悪いですし、敬遠して着用機会が無かったと思います。

真冬の「セーター」というアイテムの素晴らしさを改めて再認識できたリフォームでした。

あとがき

この度のアイテムは、レアな、ボレロ風でボタン1つ付いていないものではありましたが、ボタン付きのカーディガンなども可能な作業だと思います。

その時にボタンは完全にデザインだけということになりますが、ボタンを取り外し、ホールをグログランテープなどで覆うということも更なるアレンジのアイデアです。

結局のところ、目指すべきゴールは、「心地良さ」ということになるのです(^-^)。

波打ち、うねりを解消するファスナーの取り付け方【28】

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

バッグのファスナーというのは、玄関のようなもの。

整ってスッキリしている状態がやはりグッドです。

今回は、ファスナーがものすごく波打って出来上がってしまったバッグについて、リフォームのような作業をしながら、その波打ちを解消していきたいと思います。

そもそもファスナーが波打つ場合とそうでない場合の違いは?

どんな場合でも大きく波打つというわけではないです。

大きな1つの原因として、ファスナーに縫い付けられる生地があります。

ファスナー自体は大きくはそれほど伸び縮みするものでは本来ないと思います。

ただ、ファスナーに縫い付ける生地があまりにも伸びる生地だったり、洗濯によって生地が縮み、そのパワーでファスナーも一緒に動くという物理現象があったりします。

今回の私の例では、前者の、生地がよく伸びる生地であることが原因となります。

ニットだから伸び、織物はそれほど伸びないというのが一般的な考え方ではあります。

今回は、しかしながら、ニットではなく織物なんですね。じゃあなぜ。。。

フクレジャガード素材で作ったミニボックス型ショルダーバッグ:ポリエステル/100%
・・・メインファスナーが特に大きく波打ってしまっています。
驚くほどファスナーがうねっている口布:これは気持ちの良い物ではありませんね。
ファスナーも開閉しにくそうです(*_*)。

織物ではあるのですが、フクレジャガードという名前が付いていて、ぷっくりと膨らんだ立体的に見せる加工がしてあります。

当然ながら、ぺったんこの平らな生地からつまんで、膨らませる分の余分な生地が膨らみになりますから、その余分なスペースが結局ゆとりであり、伸びるといった現象になって現れることになります。

なので、ある意味、目のしっかり詰まった固く編んであるニットよりも伸び率が大きいかもしれません。

このブログ記事のちょうど1つ前の【27】の記事では、同じミニボックス型ショルダーバッグが完成した記録を掲載しました。

その時の紺系のマルチカラーの変わりボーダー柄はニット生地だったのですが、この問題が起こっていません。

ということで、フクレなどの加工物は織物であってもニット以上に伸びる生地のゆとりが多く、注意が必要だということです。

一筋縄ではいかなかった波打ち解消の作業

まず、とりあえず、ファスナーを取り外さねばなりません。

今回の場合お直しが可能な物理的状態にありました。

よって、ファスナーに縫い付けてある口布部分のみを糸を切って取り外します。

口布の部分の、ファスナーが縫い付けてある箇所のみ、リッパーで慎重にほつきます。

このデザインだからできることであり、また、このデザインだからこそ、波打ちが目立つとも言えます。

そして、ファスナーが綺麗に取り外せたら、伸び止めテープを貼るという対策をしました。

伸び止めテープは本当は黒の方が良かったですね。いや、たとえ黒であっても飛び出さないようにわずかな隙間に隠さねばなりません。

よって、9mm巾の伸び止めテープを縦に、半分にカットして、4.5mmにして使います。

伸び止めテープ9mm巾を半分に縦にカットして、4.5mm巾で使用します。
もともと細い幅のテープを使用した方が当然綺麗です。

これで、表から見えることがなく、中に隠せるかと思います。

そして、アイロンで、生地側に飛び出さないように気を付けて接着します。

伸び止めテープを口布の裏側に接着します。

そして、ミシンでファスナーに縫い付けます。

その出来上がりが、こちら。

伸び止めテープを1枚仕立てで貼った状態:残念なことに、それほど貼っていない状態と変わっていませんでした。

あれれ?。

あまり変わり映えがしませんね。とんだオチでした。

結果的に、伸び止めテープを1枚仕立てで通常のようなやり方では、通用しなかったのです。

分かりやすく、ビフォーアフターで比べてみますね。

左:伸び止めテープを全く貼っていない状態 右:伸び止めテープを1枚仕立てで貼った状態
・・・それほど変化がなく、波打ちが解消されているとはとても言いがたい状態ですね。

ということで、いったんエラーということになります。

そこで、次の対策として、伸び止めテープを重ねて貼ることにしました。ただ、2枚だとあまり変化がなく、またやり直しになるかもしれない手間もあり、思い切って3枚重ねです。

その結果がこちらです。

伸び止めテープを3枚仕立てで貼った状態・・・・かなりすっきりしましたね。波打ちがかなり解消されています。

分かりやすく1枚仕立ての状態と並べますね。

左:伸び止めテープを1枚仕立てで貼った状態 右:伸び止めテープを3枚仕立てで貼った状態

だいぶ、良い状態に進んだようです。最初と比べれば、劇的ですね。

上:伸び止めテープを全く貼っていない状態 下:伸び止めテープを3枚仕立てで貼った状態

次は、段階ごとの移り変わりも見てみましょう。

とりあえず、解消はできたということです。

ただ、完璧に波打ちがなくなったとは決して言えません。あくまで解消の領域内であり、完全に成功ということではないのです。

これが厳しい現実です。

完璧に波打ち/うねりは無くせるのかどうか

ところで、完璧に波打やうねりは皆無にできるのでしょうか。

これは、おそらく、不可能だと私は結論付けました。

ただ、劇的に解消はできるという検証結果がこのたびのリフォームで出ました。

ニットの生地とか、伸びるような生地を使う宿命として、この現象はどうしても起きてしまう仕方がないことです。

が、今回これほど劇的に解消できたのは、良かったことです。

あとがき

今一度最後の方の検証結果の所を振り返りますが、今回のうねりの解消で、完全には「うねり」現象は、完全にはぬぐい切れないものだということを結論付けました。

それなのに、このバッグを作って行くの?ということになります。

ということで、最終的な結論は、「こういった完全が実現できないようなデザインは作るべきではない」というものです。

私は大切なことを忘れていました。

一度考えたので作り続けていかなければいけないのだという固定観念。

これは間違いで、自分が腑に落ちない状態にしか出来上がらないものを製作するのかというそもそもの最初の時点の判断を、「製作しない」というジャッジにするということもできるのです。

まあ、そこまでということであれば、少なくとも、今回のフクレジャガードはファスナーと組み合わせるべきではなかった、ファスナー仕様の無いバッグのデザインに製作するべきであったと言えます。

これこそがこのたびの最も重要なポイントです。

どんなお品でも綺麗に出来上がることができないものはそもそも作らない、ということで、「切り捨て」の大切さがあります。

切り捨てるなんて冷たいようですが、悪いお品を商業利用することこそが一番冷たいことなのです。