<糸調子>11号帆布が厚手デニムと同様織りが緻密で硬いことが原因、取説にはない糸案内と糸調子ダイヤルの調整の仕方を見つけました【1303】

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

バッグを長い間製作し続けてまいりまして、共に歩んできた必須材料として「糸」があります。

どんなにミニマムなデザインでも、バッグには必ず「縫い」が入りますので、糸という材料がどの製作にも入ってくるのです。

当たり前の材料なのですが、その当たり前な「糸」こそが重要だと見直す機会を持つことも重要です。

糸を最大限の美しさで見せていくことも、バッグ製作の完成品の見どころだからです。

このたびは、その大切な1目1目の美しいステッチで押さえていくにあたり、どの生地でも同じような調子ではいかない難しい局面の例として「帆布」の糸調子を具体的に細部にわたって見ていきます。

糸調子が特別な素材というのは、デニム・帆布・カツラギ等の厚地と呼ばれるもの、ただ厚みがあるだけではなく「織りが緻密で硬い」という点こそ本当の原因です。

よって、薄手でありながら、緻密な織りのナイロン/100%も何重にも重なれば、その弾力性の威力も重なり、糸調子の難しさ(強く引き締めなければ整わない)ということが起こります。

つまり、薄手でも「ごわついた素材」には当てはまることだと思うのです。

では、11号帆布で実際に縫って失敗した糸調子がどんな条件であったからなのかをひも解き、美しい糸目になるような糸調子の合わせ方に成功した記録を是非ご覧くださいませ。

糸調子の「失敗」:①糸案内の真ん中を飛ばし②糸調子ダイヤルを1.5-2.0で縫ってしまった

汚い糸調子:ブロードなどの糸調子のまま縫うとこんな風に。。反対側が上糸側、こちらは下糸側です。

考えがちなのは、原因が下糸のボビンの糸調子の悪さですが、そうではないところに奥深さがあります。

ボビンの下糸に関しては、基本的に最初に一度クレーンのようにケースごと吊り下げて、鈍く下に降りていくようであれば、それで正解、それ以上調整することはないのですから。

では、この状態をどう言葉で表すのかというのは、「上糸が緩過ぎる」ということに導ける結果なのです。

しかも、手前に素材名が条件となり、「帆布にとっては、上糸が緩過ぎる」と解くのです。

まず20番のオレンジ糸をこのように通常通り通します。ここでは特にこの姿で問題はありません。
次に、「取説」によるスパン糸用の通し方で糸案内の真ん中を省略してしまいました。→これが間違い✕。
押さえを降ろした状態で一般的な生地と同じように1.5程に糸調子ダイヤルを合わせます。→これが間違い✕。
そうして、こちら側を上糸側でステッチしていきました。上糸側は問題を感じませんが↓
反対側(下糸側)は、こんな風に汚い糸目で出たのです。とても納得できる糸調子ではありません。

ということで、今度は、成功例の方、糸調子が合った場合の同じ部分にご注目いただきながら成功した状態をご覧くださいませ↓。

糸調子の「成功」:①糸案内の真ん中も通し②糸調子ダイヤルを3.0-3.5で縫ったからうまくいった

では、今度は、成功した糸目になった時の条件をお伝えします。

さて、これらの段階の中で、どこが悪かったのでしょうか。

スタートは同じで、ここは問題なしです。
糸案内の穴すべてに通すのです。これは、失敗の方では真ん中を省略していました、まず1つ目のポイントです。
糸調子ダイヤルは、押さえを降ろした状態で3.0周辺に設定。強く締めたことになります。これが2つ目のポイント。

ただ、4に行くことはありません、そこは職業用ミシンの限界と見ています。

同じようにこちら側からステッチ。こちら側も前者よりもしっかりステッチが埋まって整ったように見えます。
そして、反対側を見てみると。。綺麗に縫えていました。これなら合格。糸調子の調整の成功です(^o^)丿。
表に見えるステッチも素敵なDカンタブに完成。細かいパーツが整然とし、バッグ全体のレベルアップに貢献。

以上が、帆布用の糸調子のメソッドでした。

ということで、11号帆布に関して、望ましい糸調子の条件は、

①糸案内にフルに通す(スタートは下からくぐらせて)。

②糸調子ダイヤルを3.0程に設定(強くする/引き締める)。

でした。

11号帆布は8号帆布などのごわついたタイプよりはるかに柔らかくて柔軟性があるように見えますが、実際には、帆布らしい目の詰まりや硬さがあったのです。

号数が上がる(数字が小さくなる)につれて、②を3.5程度まで上げていくことがあるかもしれません。

以前にセルヴィッチデニムのヘビーオンスと呼ばれる25ozで三つ折りをした時の②は3.5強でした。

それでも4までは、行きませんでした。かえって糸が切れてしまいがちになるかと。。

それよりも、①の糸案内にフルに通すことをした方が効果としてははっきり出ます。

あとがき

糸調子に関しては、大変多くのハンドメイド道を歩まれた方が直面することだと思います。

ブログ記事のタイトルの頭に<糸調子>が付いた記事を当ブログ内で検索していただきながら、答えを見つけていって下さいませ。

できるだけ、ピクチャレスクも具体的にお示しした実体験記録にしていくつもりですが、細かいところ、デニムのオンスによる違い、帆布の号数による違いもあると思います。

バッグが美しいステッチをもって出来上がることを心より応援申し上げます(^-^)。

ピクチャレスク-山田絵美-ブログラスト
書き手:ピクチャレスク

工業用ミシン糸30番のスパン糸の下糸ボビンにフルに巻けるm数は17.5m、60番の50mに比較した極端な少なさでも二重ステッチを惜しまない【1039】

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

ミシン縫い作業において、通常下糸のボビンは、上糸のコーンから巻き取る作業をします。

この時にストッパーが作用し、自然に止まるところがボビンにフルに巻いた状態です。

あの全体の長さってどれくらいなんだろう。。

一度はそんなことを考えるものです。

ありがたくネット情報を拝見しました予測をされた方の見解からは、「60番糸でだいたい50m」だと見ています。

30番糸をハンドメイドバッグに使用していますので、この糸の太さの違いはなかなかのもので、60番で50mであれば当然少ないm数しか巻けないことになります。

このたびは、実際に30番のスパン糸のボビンにフルに巻いた糸を測る実験をしました。

単純計算の「60番で50m→30番で25m?」を遥かに下回る結果に大変驚きました。

しかし、それでも量産品でよくある削減(使用糸の分量や作業の分量をそぎ落とすこと)を決してハンドメイドではするべきではないというメッセージをここに綴りたいと思います。

60番糸でだいたい50m周辺という情報から、30番の場合はどれくらいなのかをリアルに実験、スパン糸とテトロンでも違う巻きm数

ボビンに巻いた糸:黄色が30番、グリーンが60番。同じような分量に見えますが、実寸は黄色の方が短いはず。

細い糸はたくさん巻けますので当然60番のグリーン色のボビンの糸の方が分量は当然多いはずです。

まずネット情報の複数の見解を拝見したところからの予測では、だいたいスパン糸60番で50m、比較実験としまして、スパン糸30番で実験をしてみました。

単純計算では、「60番と30番でちょうど数値が1/2、50mは同じく1/2の25mになるのか?」とまず考えます。

しかしながら、実際の実験では、30番のスパン糸で17.5mの結果が出たのです↓。

フルに巻いて実際に巻き尺でボビンにある糸の合計m数を計った実験結果は17.5mでした。

同じスパン糸でもメーカー様によって違いがあるでしょうし、テトロンの場合は、細いのでボビンを巻き切るまでの秒数が長いことでテトロン糸の方が長いm数巻けていると予測します。

随分30番ともなると随分糸の線径が太いということを、この少ないボビン巻数の数字からも実感できます。

原価表に入れ込む糸の見積もりは常に200m使用までの範囲と仮定の一律で¥100を入力している

ここで少し余談ですが、1点ハンドメイドバッグを製作する時に、1点分の原価表をそれぞれ作っています。

これは、販売価格を決める際の資料ということと、期末の棚卸の際に原価表の合計の値を引用するからです。

1つの原価表で複数の活用があるわけです。

フォームはいたってシンプル。

商品を自社製造している方は加工賃は会計上は入れません。

請求書などが発生した「仕入」科目を使ったものだけを棚卸資産にリストアップしますので、自作は¥0であるというのが会計上の見方。

しかし、その分販売価格に見積もればよいので、製作者の裁量とお客様のお求めになる価格を考慮して売値を決定することになります。

それで、この原価表の中にも糸の項目を毎回設けています。

ミシンで何かを作るには必ずこの糸の項目が登場すると思うのですが、実際に出来上がったステッチの部分をすべて計って合計しても不正確。

そもそも、縫い始めと縫い終わりのあの糸の飛び出しこそが余分なロスであり、糸の使用度が進行していく大きなきっかけなのですから。。

よって、一律で200m使用する設定をしています。

このたびの場合、原価表には当然上糸の分も入れねばなりません。

糸を1コーン(2,000m巻)で購入の場合の原価は、購入時のm数から何分の1くらい使ったのかなどという見方で、1/10くらい(200m)というざっくりとした見方です。

そうしますと、糸代はよほど最高級な糸をわざわざ調達しない限り「数十円」という原価ですので、毎回計算せずとも、見積もりの固定価格を設定して、常にその分を糸代として入れればよいのです。

ということで、1点のバッグで一律200m使用の¥100を見積もっています。

ちなみに、アパレル勤務の会社員時代の仮原価表の算出の際にも、同じ¥100でやっていましたので、お洋服のコートやジャケットなどの重衣料の分量でこれくらい。

ステッチの量が非常に多い4本ステッチの支柱を設置するバッグを作る者でもこの範囲で大丈夫だと見込みました。

あとがき

附属品の既製品の金属パーツなどは高額です。

それを調達する代わりに糸で縫いを丈夫にするという手もあります。

目指すところは、あくまでも「良質」なお品物である所は変わりが無いのです。

しかも、材料調達の工夫としまして、糸を一度に複数購入のお得なパックでこれまで過去の在庫糸を調達してまいりました。

かつての国内縫製工場の使用糸はこちらもおそらく日本製で非常に良質。

新品で製造された糸よりもかなりお得なので、元々コスパがあるのです。

その分、惜しみなく糸を必要に応じて二重縫い、見えない部分の丈夫さの追求に役立てているのです(^-^)。

ちょうどのタイミングで下糸がなくなったケース、玉止めの下糸がほんの1cm程度のわずかしかない場合の手先を使った結び方【1024】

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

ミシンによるハンドメイドライフが長くなりますと、時々このたびのような状況があるのではないかと思います。

最後の玉止めをしたいのだけれど、下糸がちょうど終了してしまい、ちょんと短くしか残っていない場合です。

特にボビンに巻いた下糸はその終了時がなかなか予測不可能なのです。

普通に上糸と下糸を両方動かすと指がそこまで細かい部分に対応しきれず、途中で挫折。。少しのコツがあるのです。

では、この場合の玉止めの最もやりやすい結び方をご紹介したいと思います。

下糸が足りないことがほとんどで起こる玉止めの分量不足の事態の打開策、手先を使い短い方は立てて長い方を根元に巻き付けるイメージ

縫った生地の裏面。分かりやすくカラー糸で。上糸の紫色は長く、下糸の黄色は1cmくらいしかない場合です。

Youtube動画もこの後貼りますが、ほとんど指に隠れて映りませんでしたので、ここでは言葉と写真で具体的にご説明します。

玉止めは左右均等に両手で行うことがほとんどですが、こういった場合は緊急事態と言えます。

そもそものやり方を見直さなければ不可能だったことでおそらく自然にどなたもここに行き着くのではないかと思うのです。

<具体的なやり方>

短い方の黄色は上に立てて、動かさないですしほとんど触れないです。

紫色を黄色の周りに囲むように輪を作って、紫色だけを黄色の糸の根元に結びつけるようなイメージです。

短い方の黄色の糸は立てたままで、指を使って長い方の紫の糸を黄色の糸の根本に巻き付けるイメージです。

最後結び目を固定する時だけ、黄色の短い方もしっかり引っ張ります。

片方の糸が短くても、もう片方が長ければ結べるということが証明できました。

通常の玉止めのように二度結びますが、二度目も同じようにやります。

短いことで力が及びにくいので、指の先の方や爪を使いながらぎゅっと結んで固定して下さいませ。

完成:短かった糸の困難を見事克服して玉止めが完了しました。

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このケースではなくて、途中で下糸が終了してしまったりなど縫っている途中のケースに関しては、これも別のやり方がございますので【123】の記事をどうぞご参照お願いします<m(__)m>。

あとがき

些細な事ではありますが、なかなか手芸の本には良いコンディションでできることしか書かれていません。

こういったハプニングは各々がやる中で経験していくことになるわけですが、それでも、事前に知っているのはよりお得です。

そんな裏技みたいなことも今後たくさんお伝えしていきたいと思います。

要するにうまく出来上がれば良いので、野を越え、山を越え、良きゴールにたどり着けるようなやり方であれば、邪道でもないのかもしれません(^-^)。