ドーム型バッグの型紙の底ラインがカーブであるべき理由、実際の型紙でのシミュレーションがそのヒントをくれた【129】

アイキャッチ画像129

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

1980年代後半から好んでいたドーム型のバッグは、ハイブランド様が最初に作られたものだったと思います。

アパレル業界の「トリクルダウン」構造により、他ブランド様にも浸透。

一世を風靡したデザインでもないことから、かえっていつの時代の流行の中でもニッチな存在として持てたのでした。

ただ、本革レザー製のハイブランドバッグは内貼りが合皮であったことがほとんどで、その後劣化し手放すことになっていったのでした。

そのなつかしさと自らの好みから、布製でこのドーム型を作ってはいけないかとトライしたのが2019年でした。

ハンドメイドバッグ道の2007からはおよそ10年後のこと。

そこで、とても不思議であり当たり前でもあった物理的事情を知ることに。。

このたびは、ドーム型バッグの底のラインに注目し、型紙でそのデザインの正解に近づくための理論をシミュレーションしていきます。

つまり、ドーム型の正しい底のラインは型紙ではどのようなラインなのかという点に迫ります。

実際は、完全解決はできませんでしたが、そのための試行錯誤は大いに意味があったことです。

決して完成品では語られることなどない製造の裏側のような部分、是非興味深くご覧いただければと思います。

まっすぐな底ラインでは出来上がりの両サイドが反ってしまうドーム型バッグ、地面に平行になるための型紙の修正

2019年に製作のドーム型バッグ:いずれも両サイドの底周辺が反ってしまいます。このラインは型紙に問題あり。
初期の型紙:ドーム型なのだからこの型紙を最初に作ってしまうと思います。ところがこの型紙は不正解。

なんとなくではなく、はっきりした理論で理解するために、型紙のみでシミュレーションをして修正してみたのでした↓。

型紙で両サイドを重ね合わせた底のとがったライン:当然出来上がりは反るに決まっているとこれで分かります。

平面(地面や机)に対しての尖り構造はぐらつき不安定であるに決まっているのです。

ただ、布製の融通さも相まって作り上げてしまえることで、長い間なかなか気付くことができなかったのでした。

型紙のとがった部分の除外作業:1枚を左右対称に折り、底の真っすぐラインから飛び出した部分を削ります。
削除後のラインのシミュレーション:作図した通りにハサミでカット。右は再び重ねて底の水平ラインを確認。

写真の映りが悪いですが、右の写真は型紙上ではまっすぐラインに重なったことが実現しています。

出来上がった修正型紙:変な形ですが、これが物理的な現実に近づいた姿。しかし2か所の尖りの解消が必要です。
修正後の型紙:2か所の尖りを更に緩やかにした再修正型紙:これで理論上は解決したはずなのですが。。
再修正後の型紙で作ったドーム型バッグ:かなり解消されましたが、反りが完全解消ではなく尖りも残りました。

ここで更に、理論上の正解が実際の正解ではないことを知りました。

完全に解決はされなかったラインの問題、残念ながら最後まで未解決のままこの製作から離脱したのでした。

あとがき

当ブログ記事は、最初の投稿の2020.06.01からおよそ5年後の2025.05.11にブログ記事の「手直し」の順番で、タイトルから見直しここまで綴り直しをしてまいりました。

最終的には完全解決が出来ず撤退したドーム型バッグ、私ではこれが限界でしたが、途中の物理的な現実と想像のみのギャップは重要なノウハウでした。

意地でも最後まで解明していく気力を持つには、もともとこのドーム型バッグを考案していなければできなかったこと。

最初に考案のハイブランド様は独自の考案という最強の基盤があったと思うのです。

ある意味、この撤退も相応しい行動であり、その後自ら考案することの本当の意味での強さと大切さを持つようになっていきました。

このたびのような完成型まで行かなかった途中段階であってもあえて記録に残しました。

「バッグの底は、出来上がり自体が必ず水平であるべき」という鉄則のようなものだけでもお伝えできたかもしれません。

ピクチャレスク-山田絵美-ブログラスト
書き手:ピクチャレスク

取っ手の付け根のワンポイントに、ハトメの穴に通す取っ手の付け方はミニバッグならではの特権【62】

アイキャッチ画像62

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

現在ハンドメイドバッグ製作におきまして、「同素材シリーズ」という企画を始めております。

【61】の記事からスタートしておりまして、デザインは全部で5つ、①ドーム②バニティ③巾着④ボストン⑤リュックです。

どれもミニサイズですが、150cm幅の生地1.5m内で有効活用しながら5点を連続製作予定。

このたびは、①ドーム型の後半部分の製作を含む完成場面です。

<同素材シリーズ:ドーム-後編>力がかかり過ぎないミニバッグに有効、スタイリッシュな取っ手が実現の片面ハトメ

以前の製作の巾着バッグでは、アルミ素材の片面ハトメ用にセットになっている「プライヤー」を使う方法と、硬め素材の片面ハトメ用に打ち台などのセットで行う方法の2通りをやりました。

パープル系のマルチカラーの生地に合うのはシルバーカラーであると判断し、アルミ素材の方の「プライヤー」を使用しての設置を選択。

穴をポンチでくり抜く作業は、共通で金づちで打ち込み作業があります。

片面ハトメの設置:左上はポンチで穴開け場面、右下は「プライヤー」でカシメて取り付け場面です。

以前の片面ハトメの打ち込み場面でもミスをしていたのですが、まだこの時知識が足りず、下にダンボールを敷いてしまっています。

画像や動画が当時のままであること非常に申し訳ございませんが、これは実は悪い例。

汚れ防止に新聞紙を敷く程度は良いですが、平らな硬いコンクリートや厚みのある木製のテーブル上で行うべきもの。

クッション性のあるダンボールを敷くなどかえってずれなどが起こりやすく、失敗の元なのでした。

10mm幅程度の取っ手を製作:直径8mmの穴に10mm幅というのは布製ならではの無茶であり、悪しからず。
完成した取っ手を取り付けた片面ハトメに通します。表側から遠し、通った後に三つ折りしてミシンで縫い付け。

通した後内側で三つ折りを縫い付けることで、穴から表へ飛び出すことがありません、つまりは、ストッパーの役割りをしてくれるのです。

「おにぎり(ドーム型)」完成:<サイズ>縦20cmx横22/27cmx12cm。片面ハトメの存在感は大きい。

非常にスタイリッシュに取っ手の付け根を装飾してくれながら取っ手を通すというホールの役割りの「片面ハトメ」。

コーデ例:バッグ素材に僅かに入る白にリンクの花柄レースカットソー、バッグ生地のエレガントさに寄せます。

あとがき

当ブログ記事は、最初の投稿の2019.10.03からおよそ5年半後の2025.03.03にブログ記事の「手直し」の順番で、タイトルから見直しここまで綴り直しをしてまいりました。

その後の、バッグのサイド部分の反りの「えくぼ」、随分研究しましたが、正しい型紙が見出せませんでした。

こうした結果のままであることも、そもそもハイブランドバッグのあるモデルへのあこがれ、自らが生み出したアイデアではないのです。

確かにあこがれて長い間好んできた自分使いのバッグでもたくさん持っていた形だったのですが、そういった真似事には結局とことんまで追求する「熱」が続かないものです。

なぜ、このデザインでなければいけないのかの理由が、「あこがれ」というだけでは弱々しいものなのではないでしょうか。

もし、自らが閃いたデザインならば、上手くいくまで粘り続けたと思うのです。

それだけそのアイデア自体が「他人」のものだったということ。

この片面ハトメ含むすべての打ち込みパーツ(ヒネリ錠なども含みます)は、その後はすべてを廃止。

しかし、ひと通りほとんどすべてを一度は体験させていただき「肌感覚」というようなものでその感触を知っています。

なぜ「廃止」を決めたかの説得力としてはちゃんと体験した者のみが実直に語れることだからです。

この度のようなバッグの小ささなら重みが極度に増えず、カシメることで支えられているパーツが維持できるのではないかと、ミニバッグとの相性で成り立っていた製作だと見ることができます。

ピクチャレスク-山田絵美-ブログラスト
書き手:ピクチャレスク

ドーム型ミニバッグの存在感ある取っ手、美しく設置されるための望ましい付け位置のバランス・寸法・間隔の研究【50】

アイキャッチ画像50

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

このたびドーム型ミニショルダーバッグが完成、暖色系のみかんのようなイメージのカラーが心温まるようなバッグになればと選んだ美しい生地でお作りしました。

ショルダー付きではあるものの、取っ手を付けましたので、ミニバッグには存在感ある取っ手をしっかり付けるようにと、左右の間隔と上からの位置の良きバランスを考えました。

特に、取っ手が意外に目立つ存在感を感じていただき、持つという機能を越え、バッグの象徴のような存在であることをお伝えできればと思います。

ミニドーム型バッグの取っ手の間はおよそ7cm、トップからはおよそ6cmに設置したバランスを完成品で確かめた

取っ手の付け位置の設定:左右の間隔は7cmに設定、上からは縫い代含み6cmの位置。完成は4.5cmの位置。
取っ手の高さ:30cmの型紙です。トップから上に5.5cm程の高さ。取っ手間の7cmとのバランスはグッド。
裏地の「プリズマン」というネーミングのジャガード生地のポケットを作る場面。柄合わせは不要。
「外表」の組み立て縫い:クライマックスの場面です。立体的なのにつぶして縫うことでずれやすい難易度あり。
ファスナー2本使いよりもダブルファスナー1本使いの勧め:仕方が無かったのですが、右のように始末が丸見え。

そもそも「ダブルファスナー」の既製品を選択するべきだったのですが、この黄土色のダブルファスナーが見つけられなかったのです。

こうしたことから、既製品の附属品の利用は妥協の部分が生まれることがあり、妥協を生むようなデザインを作るのかどうかということさえ後に検討するようになりました。

そうでなければ100%のお品にならないと思うのです。

完成:縦23cmx横27cmxマチ12cm程。このデザインの良さは小ぶりながらマチが大きい点。
背のファスナーポケット:ミニサイズにしては充実ですが、せっかくの柄を途切る残酷さを後に見直しました。
コーデ例:オフカラーのアイテムを取り込んだコーデに合わせやすく馴染みます。柄バッグはクセがあります。

あとがき

当ブログ記事は、最初の投稿の2019.09.09からおよそ5年半後の2025.01.19にブログ記事の「手直し」の順番でタイトルから見直しここまで綴り直しをしてまいりました。

そもそもなのですが、このデザインの型紙が間違っておりまして、山の裾のように斜めに降りていくラインでは写真の端っこのように底周辺のサイドの部分が反ってしまうのです↓。

この部分の「反り」は型紙間違い。余分な突き出しがあるということの表れで削る必要があると考えます。

このことを、後に研究し型紙修正などをしてみて地面にぴったりと重なるようなラインになるための平面でのラインの表現は。。などとやっていきましたが、結局は答えが出ませんでした。

とはいえ、このたびのような生地の温か味ある雰囲気をカーブを含んだラインのバッグに落とし込む1つのアイデアとしては引用していただけるのではないかと、苦い失敗作ながら記録に残しました。

ピクチャレスク-山田絵美-ブログラスト
書き手:ピクチャレスク

崩れ易く頼りない生地の状態の「風通ジャガード」、ミシンステッチによりどんどん逞しく固められていく性質の発見【37】

アイキャッチ画像37

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

2019年は、「バニティ」「ボストン」「リュック」「巾着」「ドーム」という主に5種の立体的なデザインのバッグを研究しながら高級生地で製作していくことに挑戦した時期でした。

当ブログ記事は、最初の投稿の2019.08.22からおよそ5年半後の2025.02.06にブログ記事の「手直し」の順番で、タイトルから見直し綴り直しをしています。

よって、YouTubeでは2019年当時のままの内容でも、当ブログ記事はリフレッシュされ内容が高められていますことをブログ記事をご一読いただけるメリットとしてお伝えしたいと思います。

このたびは、「ドーム型」のミニショルダーバッグをイタリア製の美しい「風通ジャガード」生地で製作する前半の部分をお送りします。

完成は後日の記事の【39】でご覧いただけます。

裁断後の崩れ易さから一変、製作を進めていく中でどんどん強固になっていったイタリア製風通ジャガードの真の性質

そもそも、このドーム型は、某ハイブランドバッグにあこがれて好んできたデザイン。

特に流行が色濃くないという点に最も魅力を感じていました、1990年代からのこのデザインのファンなのです。

ただ、見様見真似ではどうしても同じフォルムにならず、型紙の底周辺のラインが一番の「秘密」の部分なのだとお見受けしました。

この時に製作を進めてはいましたが、そもそも本体のラインを作る型紙自体が間違っていると思うのです↓。

ドーム型バッグに初トライする時に誰もが一度は左のようなラインで考案してしまうのでは。これだと反ります。

そして、数年後に考案したのが、右のような型紙。

先端のとがりをそぎ落としカーブ上になると、バッグを下に置いた時に地面にぴったりと着するフォルムになるような型紙ラインは。。というシミュレーションもしてみましたが。。

結局は最後まで最もベストなフォルムに一致した型紙は作ることができませんでした。

右の型紙はそのシミュレーション研究時のものですが、尖りがあってそれがラインにもろに出て出来上がってしまったのです。

あのとがりの部分をまっすぐにすれば良いのか?というのもそうではありません、結局答えは出ずじまいで、このデザインをその後諦めていきました。

あこがれは憧れに過ぎず、自ら生み出した「願望」からスタートするラインであるべきなのです。

たやすくぱっと見で既存のデザインを型紙で表現などととんでもない図々しい考えでした。

表地(柄):風通ジャガード、ポリエステル/75%、絹/22%、ナイロン/11%(全体で100にならないため、生地屋様の記載間違いだと思われます)、イタリア製。右側は裏面で、表面として使えるレベル。
裏地-右(ゴールドラメ):クリスティーヌ、ポリエステル/60%、メタル/40%、日本製。
柄以外の背景の部分は糸が今にもほつれそう、早めに接着芯を貼り、作業を進めるのが良いと思います。
接着芯貼り後の表地と裏地:この時点であまりにも不安定な風通ジャガードに対して頼りなさを感じていました。
ところがです、ファスナーを縫い付けステッチをしていくにつれてどんどん強固になっていくのを感じたのです。
取っ手取り付け後:観音開き折りで4本のステッチが走ることでどんどん素材が固まって逞しくなっていきました。

これらのことに非常に驚き、これこそが正に「風通ジャガード」の真の性質なのではないかと思ったのです。

なぜに空気(風)が通るような空洞を作るのか、立体感の表現だけでは決してないのだとこうしてミシンステッチを走らせ、作ることで分かったのでした。

空気は「頑丈さ」をも作る無料の資材なのではないかとさえ思えたのです。

あとがき

番号が少し飛びますが、【39】の番号で一応形だけの完成となります。

途中でもお伝えしましたように、そもそも型紙が間違っており、このまま完成しましたがサイドの底周辺が反ってしまいました。

とりあえず記録には残しておりまして、同じように作ってしまわないための予防線としてはお役に立つのではないでしょうか。

失敗が立て続けでありますが、この研究期間は貴重であり、「風通ジャガード」の深みに触れることができたと思っております(^-^)。

山田絵美
書き手:ピクチャレスク