<糸調子>11号でも帆布の織りの緻密さ・硬さは普通地をはるかにしのぐ特殊なもの、縫った反対側の糸調子が整わない時にやってみること【1335】

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

このたびの投稿は【1335】という番号なのですが、実は少し前の【1303】でも全く同じ生地で糸調子の記録を残しました。

同じ生地でありながら縫う箇所が違うケースだからなのか、全く同じ糸調子ダイヤルではなかったことでこのたびも別の記録として残したのです。

このたびの実験では、糸調子ダイヤルを【1303】では「3」周辺でお伝えしていましたのに対し、「3.5-4.0の間」で何とか合ったという結果でした。

随分上糸を引き締めて強くしていますが、以前の投稿の時よりももっと硬くなっていた状況だったと思われます。

予想できるこの違いの原因としては、縫う対象物の硬さが、以前の三つ折りのふんわりとした先端部分に対して、生地同士のハギ目の特に硬い部分だったからかもしれません。

しっかり結論が出なかったのですが、同じ生地でも決めつけずに、製作場所によっては糸調子が少し変わるということも心得として持っていると良いという例としてありのままをお伝えします。

そして、以前の【1303】ではお伝えしていない、下糸の段階からボビンと一緒に糸調子を合わせていった写真や動画を初めて掲載しました。

糸は20番スパン、帆布11号のパッチワークを作る場面で調整した例で、縫った時の反対側の糸目が美しく整う調整をした上糸の強め具合

①下糸の糸調子の整え場面

下糸はボビンに入れてクレーンのように吊り下げたときに、鈍く下がっていく感じがベストだと言われています。

糸は20番というデニム用などの太糸です。
ボビンケースに入れて吊り下げてみて糸調子を確認。
クレーンのように糸で持ち上げると鈍く下へ下がっていく感覚がベストとのこと。

最初、全く固まって下がらなかったので、ネジを「ミニサイズのマイナスドライバー」で緩め、今度はスルーッと勢いよく下がり過ぎたのでまた戻すという調整をしました↓。

マイナスドライバーでボビンのネジを絞めたり(右回し)、緩めたり(左回し)で調整します。

そうして、再びクレーンのように吊り下げその鈍い下がり方を確認したら、下糸の調整はこれで終了です。

②上糸の糸調子の整え場面

この後、上糸を、糸案内にスパンでありながら3穴とも通し、糸調子ダイヤルは占める方向の「3」周辺へ調整。

スパン糸は2つ穴だけ通すという「取説」からは大きく外れた行動ですが。。

3.5-4.0の間がいろいろ試した中ではベストでした。

このたびは、これくらいの糸調子ダイヤルがベスト。それ以上、それ以下だとよくなかったです。
地縫いをアイロンで割った次はこのように表側からステッチを入れます。
ステッチの裏側、つまり下糸側の様子です。満足はいきませんがこれが限界で許容範囲としました。
地縫いの両面:どんな糸調子でも上糸側は問題ないようなのですが、下糸側が乱れやすいです。これで精一杯。
ハギ目ステッチ:表面からのステッチはどのダイヤルでもほとんど綺麗。問題は下糸側、まだ乱れが残ります。

やはり、下糸側は腑に落ちない様相をしていまして、まだまだ本当は緩いと言った感じです。

しかし糸調子ダイヤルは3.5-4.0の間でやってもこれなのです。

めいっぱい糸調子ダイヤルを4.0にした場合の結果どうなったか

実験的に4.0でやってみたのですが、上糸の糸調子を4.0まで絞ると今度は良かった上糸の糸調子が狂い始めます。

強すぎる様相と同じのひきつった感じが現れてきます。

そうするとやはり、限度は3.5周辺だと言えますかね。

なぜ、【1303】では「3周辺」でよかったのに今回の【1335】では「3.5周辺」と糸調子ダイヤルが上がったのか

【1303】の記事では、両サイドから三つ折りをした3重でしたが、このたびのハギ目の部分よりも生地の重なりが緩かったのではないかと見ています。

【1303】の時の実験では、三つ折りのステッチを同じ生地で「3.0」周辺で合いました。

まとめ

最後にこのように実験しました。糸調子ダイヤルがブロードなどと同等の1.5-2.0では到底うまく縫えません。

上の写真の「反対側」の糸がループ状になってしまっている状態を糸を1か所切って引っ張ると、スーッと外れます。

これは、上糸でしっかり下糸を押さえながら自らもしっかり埋め込まれていないというようなイメージ、つまり上糸調子が緩過ぎる証拠として解釈します。

写真の下段の方の3.5ダイヤル周辺の場合「反対側」の糸目が許容範囲に整ってきています。

ただ、まるっと合格であるとは言い難く、完全ではないところをこのたびの記録とさせていただきました。

これをもっとうまく美しく縫い目が出るようになるコツが見つかれば、その時は是非アップさせて下さい。

糸屋様の貴重な言葉を思い出す、「下糸は番手を変える必要がある」というお話

実は、この糸を購入する時に、あれこれご質問をさせていただきながら納得して購入した経緯があります。

糸屋様は、上糸も下糸も20番でやるとうまくいかない確率の方が多いことをご存知のようでした。

「下糸を細い糸(50-60番など)でやると調子がとれる」というようなことをおっしゃっていました。

同じ太糸で行うことで、下糸側の糸が上手くいかないものなのかもしれません。

ただ、下糸を別の糸にして色だけは合わせていくなど非常に手間とコストがかかりますので私は今までやっていませんが、これも1つの手段だと思います。

あとがき

よくデニムなども、「縫える/縫えない」でまず判断されますが、実際はそれ以上に糸調子がちゃんと合わせられる範囲なのかということの方が注目するべき点なのです。

せっかく針が通っていかにも縫えている感じなのに下糸側の縫い目がぐちゃぐちゃというのは大変ショックで受け入れがたい姿です。

それは帆布やデニムの緻密な糸の織り目の硬さがもたらすことが原因であると結論づけています。

更に元の一重が製作が進んでいくにつれて、二重にも三重にも重なることで糸調子がどんどん難しくなっていくのです。

バッグを作るのだから当たり前ですし、「製品」である以上避けては通れない「重なり」という段階があるのです。

1つ言えることはできるだけ重ならない仕様を工夫すること。

様々な「作り方」を研究しながら、どうしても必要な部分だけ三つ折りにするなど、すべての重なりに理由付けをすると良いです。

糸調子に関しては、バッグのデザインの一部とまで考えても良いほどの美しくあるべき部分。

是非時間をかけて拘る場所としてじっくり解いていってみてくださいませ(^-^)。

ピクチャレスク-山田絵美-ブログラスト
書き手:ピクチャレスク

<糸調子>デニムのような厚くて硬い生地は糸調子も特別、しきたりや固定観念を一度見直した独自の糸調子の取り方【622】

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

ここ最近のこと、デニム地や帆布などの厚手の硬い生地を縫わせていただくお仕事がございました。

今までにはハンドメイドバッグにはめったに使ってこなかった生地。

プチ量産の「エプロン製作」のお仕事をいただいた中で、複数のデニムや帆布を縫っていきました。

その中で美しいステッチを出すための糸調子を工夫する場面がございました。

このたびは、悩まれている方も多いと見ていますデニムや帆布の糸調子の取り方を、実際に美しい糸目で縫えた時にどんな糸調子をしたからなのかなどを、実体験から綴ってまいりたいと思います。

取扱説明書や本ではなかなか詳しく語られることのない難しく解明しにくい「糸調子の深堀り」です。

デニムや帆布はブロードやローンと全く糸調子が変わることをまず肝に銘じることからのスタート

現在、職業用ミシンの「JUKI:シュプール:TL25」というのを使わせていただいております。

その後の新モデルなどと比較すると初期型の古いモデルですが、一番基本的で好んで使わせていただいております。

職業用ミシンの使い始めは2010年頃。

家庭用ミシンよりははるかに安定感と強さがあり、綺麗な糸目に縫うことが可能です。

その職業用ミシンであっても、デニムや帆布は、何も考えずに縫うと、一気に縫い目がくずれます。

それほどに糸調子に対する難易度がある生地なのです。

糸調子ダイヤル:ブロードやローンは1.5-2くらいで整います。デニムや帆布は2.5-3くらいと決めています。

どんなふうにくずれるかというと、ブロードなどと同じ調子でセルヴィッチデニムを縫った時に、もさもさと下糸がループを作ってしまうことがありました。

このことは、上糸の糸調子が悪い(緩すぎる)ということに導かれ、上糸の調整をするわけですが、それにしても、2-3の間の2.5くらいまでにしています。

これ以上絞めても、このダイヤル周辺だけに影響するような感じに見てとれまして、訳が分からなくなっていた時期もありました。

そして、次の事に気づきます。

スパン糸でも糸案内にフルに通す:取説では真ん中を開けますが、フルに通すことで糸が全体的に絞まるよう。
これも大切。この時にピンと糸が張っているべきで、縫い始めたるんでいると糸調子に影響します。

たるんでいた場合に縫い始めに上糸を針穴から引っ張ってこのようにまっすぐなラインにしてみることも実際に効果がありました。

このことは、説明書にはありません、新しい発見でした。

そもそもデニムを職業用ミシンで縫う設定など想定されていないこともあるかと思います。

が、実際職業用ミシンでデニム製のお品を縫っていくわけですから、ある意味型破りの行為となりますが、可能なのです。

これは、デニムを縫う時に、時によってテトロン糸を使う場合ももちろん同じ。

糸調子ダイヤルを4などに絞め過ぎはあまりやりたくありません。

それよりも、糸案内に全穴通すことをスパン糸の30番糸でやるという行為でひとまず少しの効果が実現。

そして、下糸は基本的なボビンの吊り下げの時の鈍く下がっていく感じ通りに調整しておきます。

下糸の調子を常識外に締めすぎ・緩めすぎはかえって良くないようです。

糸調子ダイヤルを2.5-3で、糸案内にフルに通した30番スパン糸で縫ったセルヴィッチデニムの縫い目の結果の具合は合格

そうして、糸調子ダイヤルを2.5に、糸案内にフルに通した30番のスパン糸で縫った結果は、こちらです↓。

綺麗に目が出ています。裏側にも同じように出ていますので合格。

糸ループを作ってしまっていた時とは雲泥の差。

糸調子の大切さも、こういった極端な生地を縫う時に深く知ることになります。

いつもブロードとかローンのような薄手~中間の厚みの生地を縫っている場合はなかなか意識しなくてよいことなので気づかないことが多く、こういった経験は特別です。

この縫い目こそが綺麗な良いお品ができるかの明暗を分けると思っておりますので、とても重要なポイントになると思います。

ところで、糸屋さんに糸調子をご質問した時のエピソードをご紹介しておきたいと思います。

その時は、もっと太い糸の20番糸を帆布11号にステッチするという状況でしたが、「下糸だけを60番などの細口糸に替える」という案だそうです。

糸屋様の素晴らしいアイデアだと思います。

ただ糸の迫力は番が大きい(細い)と薄れ、両面で均一ではないということが起こりますので、見栄えも考慮しながら引用されてみると良いと思います。

両面が均一が徹底なので糸屋様の方法は実行していません<m(__)m>。

糸調子が難しい理由は、厚みではなく生地の密度の高さ、「ナイロン/100%撥水加工生地」も薄手ながら糸調子が難しい意外

糸の太さや生地の厚みだけではなく、織り目の硬さこそ見逃してはならない点です。

デニムはその点すべてを兼ね備えた生地。

密度もぎっしりで硬く、しかも綾織りですので、帆布よりも幾分かデニムの方が糸調子が難しめだと思います。

そして、意外なのは、比較的薄手のナイロン/100%の撥水生地なども、硬くで密な織りなので同じようなことが起こりました。

厚みなど特にないナイロン/100%で糸調子の異常な不具合が起こったことで、当時は随分混乱し大騒ぎしました。

しかし、今になって分かることは、反対に肉厚であっても織り密度が粗ければ糸調子は取りやすかったりするということもあるのです。

厚みが糸調子を決めているわけではなく、むしろ「生地の織り密度」であるということです。

あとがき

今回は、こんな感じで、実際に体験してきた調整のコツのようなことが幾分かクリアになってきたのでご紹介しました。

とにかく、せっかくセルヴィッチデニムで作るバッグ作りなどを夢見ながら頑張っているのに、糸調子が取れなくて悩んでいる方、心より応援致します(^o^)丿。

この度の事を是非一度同じようにやってみてくださいませ、そして、実感しながら糸調子の深堀りをして製作技術の「肥し」としていって下さいませ(^-^)。