セルヴィッチは生地の耳、いつも端にひっそりとたたずむ「赤の要員」様、どうぞ真ん中へ【94】

まえがき

こんにちは。picturesque(ピクチャレスク)です。

この記事アップの2019年末辺り現在、ふとした情報を見ました。

ジーンズ熱がもはや減退の兆しというような傾向がみられるとのこと。

ここ10-20年程、ジーンズは、洋服の定番ともいうべき存在で、多少の裾の形とかウエストの位置を変化させながらずっとクローゼットに並ぶ定番アイテムとして君臨していたかと思います。

それが、ここにきてついに、減退とは。。

もしかするとライフスタイルや嗜好の細分化によって、ジーンズ一色の横並びなコーデからの思い切った変化ということも1つに流れがあるのかもしれません。

ブランドの証(あかし)のようにもてはやされるセルヴィッチは実はただの生地の耳である

セルヴィッチデニムく12-14オンスあたり>:リーバイス501が13.5ozとのことです。
こちらは、14oz程度であると重さからの算出により導き出しています。
インディゴデニム、綿/100%、日本製。生地幅は、75cm幅。
両端が白に赤いステッチが特徴のいわゆるセルヴィッチ、通称、赤耳(あかみみ)。

そもそも、私が生地屋さんで普通に購入できたところがそれほど特別なものではないと言えます。

以前私は、セルヴィッチが「リーバイス501xx」の特有の仕様だと勝手に勘違いしていました(^_^;)。

しかしながら、リーバイス501に+αのセルヴィッチだからこそその価値であるわけで、セルビッチというもの自体は、このようなジーンズ用のデニムでなくとも別の生地であっても存在します。

セルヴィッチというのは、そもそも旧式のはたおり機の名前であり、幅が狭く、通常のシングル巾と呼ばれる原反の110cm辺りの幅よりももっと極端に狭い幅。

そして、綿密な織り方の良い作りをしている機械で織った布地の耳のことで、出来上がるのに時間を要するということから、手間がかけられたデニムになるのです。

とはいえ、セルビッチは、端っこの耳でしかないのです。

パンの耳は切り落してサンドイッチにはならないです。

しかし、セルヴィッチは、立派にジーンズの一部に使われさらにもてはやされて、価値を持っています。

やはり、勲章とか、証(あかし)というブランド製を秘めたパーツだとデニムファンの間で認識されているのも、「リーバイス501」のブランド力の影響を見ます。

つまり、このセルビッチがちらりと見えることで、分かる人には分かる、今ではレアな旧式の狭い幅の機械で製造された生地を贅沢にたっぷり使わなければ出来上がらないジーンズだということがイメージできるからですね。

その手間をかけられた製造シーンの知識によって、「セルヴィッチデニム」に対して、「価値」を感じることになります。

普段わき役の位置のセルヴィッチを、真正面のお花のアップリケという主役に演出したバッグ

ここで、私のアイデアを投入する番がやってきました。

耳という存在で普通は隅っこに位置しているセルヴィッチ。

これを真ん中に持ってくる試みです。

デニムシリーズというバッグ製作のシリーズをしておりまして、この度の製作はインディゴデニムを使用しました。

そして、裁断していく過程で赤耳が余るという事態になるということが起きました。

洋服のアイテムである「ジーンズ」の裁断に関しては、「耳」はわざと計算されて端に来るように設定されているので、必ず使うという仕組みの製作のようです。

バッグでは、裏地も付けますので、実際は耳が隠れて耳というのは目には映らなくなるのです。

よって、ジーンズとは違った考え方をしていきます。

そこで、セルビッチを目につく場所にあらかじめ設置しようとしたのです。

セルヴィッチをはっきりとご披露するには、思い切って主役の真ん中にセッティングという大胆かつシンプルな考え方です。

お花の花びらと、葉っぱの大きい方の筋にセルヴィッチを利用したバッグ。
:花びらの中側に模様みたいにセルヴィッチの赤いラインを持ってくる位置に縫い付けました。
葉っぱの大きい方の筋はセルヴィッチの裏面を見せています。

このバッグ、いろいろなこだわりを込めました。

まずは、セルヴィッチチを真ん中に配置したこと、そして余計な色を使わず3色程度にしたことです。

デニムの表面、裏面、そして、キャメルベージュという色。

キャメルベージュは、ステッチ、革ひも、裏地、マジックテープすべてこれらに共通に使った色目。

色を余計に追加せずに、全体をすっきりとさせるのが1色揃えの効果です。

裏地はジャカードのシャープな柄になっていて、少してっぺんの部分で見えてもかっこよく見えるような感じにしています。

地味で仏頂面のインディゴデニムが長くバッグで使われて、まるでジーンズをはくみたいに色落ちを楽しむことができるようにお使いいただけるバッグにという思いを込めました。

末永くデニムバッグを使っていけるような機能面の工夫

さて、セルビッチ頼みのデザインはさておき、picturesque流な機能の面の工夫をお伝えしたいと思います。

今回のこのインディゴデニムは、やはり、今後使っていく中での楽しみがあります。

色落ちがしていって、遠い将来はブルージーンズのような薄いブルーになるかもしれません。

そういった段階までの長きにわたってこのバッグを使ってもらうには、いろいろな壁が。。

・途中でデザインに飽きる可能性

・バッグをいろいろなシーンで使いたくなる

このような欲が出てくることを想定しました。

自分自身がそうであったことの経験からも、きっとそのような気持ちが出てくるかもしれないとの考え方です。

ということで、そのような使用途中で出てくるであろう悩みや希望を事前に対処しておくということをいくつか行いました。

①まずは、とにかく、しっかりと作ること。
当たり前なのですが、花びらもできる限り立体感を残しながらしっかりミシンで縫い付けていきます。
使用途中でステッチがほつれたりする事故は悲しいです、ここで私がしっかり縫うことが活きます。
②形が2通りに変化できること。
通常このようにサイドのリボンでしぼるので、紙バッグのようにへこむ形をしています。
けれど、このリボンを使わなければ、横に広がり、トートバッグならではのバケツ型の広い形になります。
全く形が変化してしまうのがとても面白く、思い切ってバッグのデザイン的なテイストを変えられます。
この形で1泊旅行は十分可能です。
③アイレットカン仕様の本革取っ手は後に交換しやすいということ。
これが縫い付けの場合、作業が高額なリフォーム代がつき、大変。
けれど、この仕様なら、困難ではありません。
④両端にバイヤス位置に縫い付けたショルダーカン。
これは、今回はショルダー無しの状態の商品ではあるのですが、
いずれ使っていく中でショルダーを付けたくなった場合を考慮した機能です。
このショルダーカンは、キーホルダーにも利用できます。

以上のような辺りを使っていく場面を想定しながら強化した機能でした。

あとがき

もともと、セルヴィッチ自体にはこれまではそれほど価値を感じてはいなかった私です。

あくまで耳。ただ証とか勲章として、セルビッチは理論的に良い物であることを証明しますので、生地の質が良質であるという言葉の説得力が増します。

私も生地の選択をするときに、良質ということには注目してチョイスしていますが、良質ということがなかなか私以外の人には伝わりにくいものです。

実際に目で見たり、縫っていく作業をしていると良質であることが製作者自身は分かるものですが、その素材で出来上がったバッグを見てお客様が良質だとネット上の写真で思えるのかどうかということになると大変その点が難しいです。

その点、セルビッチ(赤耳)の存在というのは、良質であることがダイレクトに伝わる1つの良き証(あかし)なのです。

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